セルフ4|図で見る要素からの同一化・脱同一化

2017.3.30

サイコシンセシス(統合心理学)の考え方・ものの見方を、ご紹介しています。

このシリーズは、これまで、『サブパーソナリティ』について5回でひと段落し、今回でパーソナル・セルフ(以下“Pセルフ”と表記)についての4回目になります。
未読の方は、下記から(斜め読みでも)ご一読いただければ幸いです。

はじめに

前回の セルフ3|要素からの脱同一化まとまりある存在への統合 では、私たち一人ひとりを構成している様々な要素から脱同一化し、Pセルフと同一化することで、矛盾を抱えつつも破綻しないひとつとして存在することができるとお話しました。
これは、サブパーソナリティをご紹介する5回目 飲み込まれて「同一化」離れると「脱同一化」 でお話ししたことを、Pセルフの側から捉え直しているものでもあります。

サブパーソナリティの側、そしてPセルフの側、それぞれの視点で見ていただいたので、さらに俯瞰して全体図をご案内します。

同一化と脱同一化の図

以下の図は P・フェルッチ『内なる可能性』に載っているものです。
この図では、Pセルフは黒丸で表されています。

同一化と脱同一化

上段の①と②は、サブパーソナリティの5回目でも見ていただきました。
それぞれについての説明を、同書から引用します。

① 中空の円(白丸)は感情、観念等の意識内容を表しています。セルフは一日中、同一化から別の同一化へと流され続けます。「私は怒っている」「私は疲れた」「私は幸福だ」等々。

② セルフはいかなる内容からも独立した純粋意識として経験することが可能です。この位置からセルフはパーソナリティの内容のただ一つと同一化することなく、すべての内容を全体的に同時に眺めます。

③ サイコシンセシスの概念では、セルフは、演劇に対して外在的で受動的な観客でも、完全にそれに参加している俳優でもありません。セルフは俳優を巧妙に動かし、時間を上手に使ってエキスパートとして劇全体を演出しているプロデューサーです。

④ 明確に経験されるなら、セルフはパーソナリティのどんな内容とも完全にしかも容易に同一化すると決めることができます。ロマンチックな恋愛から激しい怒りや生理的欲求に至るまで。しかしその内容から脱同一化することもできるのです。セルフの経験によって、いつでも選択は自由になります。こうして全パーソナリティはセルフを活用できるのです。

少しわかりやすくしましょう。

脱同一化で選択の自由を

私たちは日常の生活において、常にご機嫌で満足していて心地いい状態にいるわけではありません。
ときには A.寝不足で眠くてしかたないこともあるし、B.なにかに反応してイライラしたり、C.おもしろいものを見つけてウキウキしたり、D.仕事に集中していることもあるでしょうし、E.邪魔が入って怒り心頭に発することもあるでしょう。
Pセルフは A → B → C → D → E と、流されていくように同一化していってしまいます。

自分が眠いと感じているのに気づく前に、通勤電車の中でうとうとコックリしているのは、身体感覚と同一化していると捉えることができるでしょう。
眠りに引き込まれる前に、自分が眠くてしかたないと感じていることに気づき、「すごい眠気を感じているなぁ」と感じられたとき、セルフは A から脱同一化します。「30分座っていられるから、眠っておくか」あるいは「眠気覚ましに…」とスマホを取り出す選択も、できるのです。

さらにPセルフが育つと、仕事に集中していても、自然と周りの状況を意識できるようになります。周囲の状況が把握できていれば、不意に邪魔をされて腹を立てたりもないですね。
なにかに反応してイライラする気持ちが湧いてこようとするのに気づけば「おっと、イライラしそうだ。コーヒーでも用意するか」と方向転換したり、備えたりすることも可能です。

上記は一例として、脱同一化すると、というお話です。

同一化で感じ切る

あるていど以上に育っているPセルフは、同一化を選ぶこともできます。これは、眠気などの身体的欲求に引っ張られるのと、ちょっと違います。
感じ切ることが、できるようになっていくのです。感じ切る|子供に習う一番正しい気持ちの感じ方 で、触れています。自分の感じている、怒り・悲しみ・嫉妬・嫌悪など、普通は感じたくないと思われるような感情をも、自由に感じ深めることができるようになっていくのです。

感じたくない感情、なぜ、感じたくないと思うのか、わかりますか? ひとつには、飲み込まれてしまうからです。
永遠と落ち込んでいるのは、つらいですね。しかし「ああ、もうこれ以上は無理だ!」というところで、スッと気持ちを切り替えることができたらどうでしょう?

さいごに

また別のところでご案内しますが、セルフが育つことによって感情を適切に感じられるようになっていくと、サブパーソナリティも育ちます。なにより、自分を偽ったり殺したりといった、抑圧やストレスの種が減っていきます。

Pセルフそのもの、あるいは育てることに興味をお持ちの方は、どうぞ自分自身に気づくという練習から始めてください。
練習方法はさまざまなあるので、これからも順次ご紹介していきます。好みにあったもの、ご自分のやりやすいものを取り入れていただけたらと願います。

さて、Pセルフのご紹介を続ける前に、いったん、サイコシンセシスでは人間をどのような要素として見てるのかをご案内しようかと考えています。