事実はなにか?をわけるのが重要なポイント|認知行動療法3
『思考=自分の考え』を切り口として最適化をはかるのに使えるツール、認知行動療法をご紹介しています。
1回目は、出来事や状況という “刺激” に “反応” している私たち として、出来事や状況などの刺激に対し、こんなふうに反応しているという事例を見ていただきました。
2回目の 頭の中のどの道を通るかで気持ちや行動まで変わってくる では、考えが通るルートによって生じる気持ちや、結果として表れる行動もパターン化されているという仕組みを、図を用いてご案内しました。その最後にお約束したように、3回目の今回は、どうやって自分自身にとって最適なルートを見つけたのか、ひとつの例をご紹介します。
こんな出来事があったとしたら
例としたのは
もしこんなことがあったとして、人に話すとしたら、どんなふうに言いますか?
「今朝さぁ、〇〇先輩に会ったから『おはようございます』って挨拶したんだけど、ガン無視されたんだけど〜」
「今日、会社行って、先輩を見かけてね、挨拶したんだけど返事してもらえなくって… もしかして、嫌われちゃってるのかなぁ」
「うちの会社の人がちょっと酷いんだよ聞いてくれる? 挨拶とかしても目もあわせてくんないんだけど、どう思う?」
3つ挙げてみました。同じ状況でも言い方によっては、ニュアンスが変わってきてるのをつかんでいただけるでしょうか?
これらのものには、本人の考え方や気持ちが反映されています。
認知行動療法では、まず、“事実” と “考えや気持ち” を分けることから始めます。
“事実”とはなにか?をご案内しておきましょう。
事実とはなにか
ここで言う “事実” とは、まったく関係のない第三者が知ることのできること。客観的なもの、と言われることもありますね。
具体的には、何人かの人がその場に居あわせたとして、誰もが「そうだ」と言うような物事を指します。たとえば、今日は◯月◯日である、などです。
もっとわかりやすくは、目で見ることができるもの、耳に聞こえたこと、と思っていただいていいでしょう。
では、事例の “事実” とは、どうでしょうか?
- ◯◯先輩に「おはようございます」と声をかけた。
- 先輩はどこかへ行った。
これだけではないでしょうか?
重要なポイントは、“事実” を、それ以外ときちんとわけられるようになることです。どうぞ覚えておいてください。
それ以外のことも大事
“事実” 以外のこととはなんでしょうか?
事例に沿って見てみると
- 自分はなにかしただろうか?
- もしかして、自分は嫌われているのかも
- どうしよう、どうしたらいいんだろう
などと考えていて、心配や慌てる気持ちがあるようですし、そのあげくに、落ち込んでいます。
- 挨拶も返さないなんて失礼だ
- こちらのことを下に見てるんじゃないだろうか
- 先輩だからって何様のつもりなんだ
と、考えたときには、疑いや攻撃性が見え隠れしていて、腹を立てていました。
全部が全部、間違っているわけではないのかもしれない。しかし、“事実”だけから考えてみると、適切ではないということに気づきませんか?
なぜなら、“事実”だけから見てみると、そもそも相手に聞こえているのかどうかすらもわからない。相手からしたら、単に気づかなかっただけなのかもしれない、とも想像できます。しかし、上記には、その可能性がまるで抜け落ちてしまってますね。
このことに気づけたとき、私は自分にとって最適なルートC「いつもいつも気にしなくてもいいんだ」を見つけることができました。
事例は私個人の体験です。よって、ここで示す最適なルートは、あくまで私個人にとっての“最適”です。その点は、ご了承ください。
さいごに
目で見ることができたり耳で聞くことができる “事実” と それ以外をわけてみて、外側にあるものと内側を比べてみると、ときに私たちは、自分の内側で起こっている自分自身の “考え” に振り回されてしまっていると気づきます。わかってみると、なぁんだぁと拍子抜けしてしまうこともありますね。
しかし、これらの “考え” には、自分自身を深く理解してあげるためのヒントや、ケアを必要としている部分が隠れていることもあります。
次回は、事実とそれ以外をわける練習として、代表的なツールとしての『自動思考記録表』 をご紹介します。その後で、自分自身を深く理解し、ケアを必要としている部分を見つけるための考え方をご案内できればと考えています。