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それぞれの恋の奥に隠れた夫婦でしかなりえない一対|山田詠美『A 2 Z』

2016.8.24

「シュガー・コート」は、『クリエイティブ脚本術』という本の言葉だ。物語における娯楽性のことを指す。目的は、真実を隠すこと。
なぜ、真実は隠されなければならないのか?
人間の心理に「自分で発見したい」という欲求があり、「自分が発見した」ということに喜びを感じる部分がある。なにより、自分で発見したことは、当人の心を動かす。

ペアリングと時計

あらすじ

主人公 夏美と夫の一浩は、ともに編集者だが別々の出版社に勤めている。ある日、問い詰められた一浩が浮気を白状する。主に愛人の元に暮らしながら、時々平然と家に帰ってくる夫を、夏美は受け入れていく。やがて、夏美も恋をする。10歳年下の男の子との恋を味わい尽くそうとする夏美。
新しい恋にはしゃぎながらも、バリバリと仕事をこなし、一浩の出版社からデビューした新人作家に入れ込む夏美は、ついに口説き落として書き下しを書く約束を取り付ける。一浩が恋人と別れて帰ってくる。今度は夏美が白状し、家を出る番だ。やがて恋が終わり、夏美も一浩の元へと帰る。

物語の輪郭

主人公が○○する話』で言うなら?

  • 大人の女の夫婦関係と恋、そして仕事の話。
  • 夫婦が、それぞれに年下の恋人を作るが元の鞘に戻る話。
  • 大人になった子供たちが、恋も仕事も真剣に楽しむ話。

上記に『いつ・どこで・誰と・何を・どのように』を補足してまとめると?

現代の東京。夫 一浩の浮気を知ってしばらく後、夏美も恋をする。夫の出版社からデビューした新人作家を口説き落として本を書かせる約束を取り付けたが、二人でいるところを夫とその恋人と鉢合わせしてしまう。一浩が恋人と別れ、やがて夏美も恋の終わりを知り、夫婦の家へと戻る。

好きポイントは?

  • 都会の女たちの軽やかさが描かれているところ。
  • 夏美の告白を聞いた一浩が、一瞬理性を失って、思わず手を上げてしまうシーン。
  • 夏美と一浩の、コミカルでテンポのいいやりとり。
  • 悪びれない、一浩のキャラクター。
  • 大人ぶりながらも素直な子供の心を持つ、登場人物たちのキャラクター。
  • 夏美の、恋にうつつを抜かしながらも仕事に情熱を燃やす多面性。
  • 贅沢と質素、夫婦と恋人、恋と仕事。正反対とも言える要素が、一人の人間になかで共存するようす。

主人公の欲求・価値観・能力は?

欲求

味わい尽くすこと。
夏美は、年下の恋人に本気で恋をしながらも、続くとか続けると思っていない。一瞬一瞬を大切にし、味わい尽くそうとしている。
コインランドリーで飲む高価なシャンパン。
テーブルもない部屋で食べる男の手料理。
自分が感じるさまざまな感情も。

価値観

真剣さを深刻ぶらないこと。以下の引用部から。

若さ故の深刻さを引き連れて来た彼女を、私は、ほんの少し憎んだ。(中略)けれど、さまざまな事情をユーモアでぼかしたり、嫉妬を戯画として描写してみたり、自己嫌悪をすっぽかしたりするものだ。

高価なもの。
値段ということだけでなく、繊細な心の動きや、初めてのシチュエーションや、失うことまでも。

能力

仕事には情熱を傾けていて、優秀でもあるようだ。
夫婦同業なのだから同じように忙しいであろうに、トイレットペーパーを切らさないなど生活への心配りも。
物語中に、字がうまいと書かれている。
自己分析能力もかなり高い。

読後に思ったこと

冒頭に置いた、シュガー・コート。読み終わったときに、だからだいじなんだなと思った。自分が若かった頃、この物語を読んでも、恋の話としか理解できなかった。もしかしたら、夫婦とは?を描いた物語なのかもしれないと思ったのは、今の私に主人がいるからだろう。

夫婦とは、なんだろう? 夫婦の数だけ、その夫婦固有の形があるのだろう。
この物語に描かれているのは、最高の親友としての夫婦。
恋人がいると白状した一浩のセリフ『本当は、ナツに言いたくてたまらなかったんだと思う。気づいて欲しかったんだと思う。』や、戻って来て『自分が自分らしくいたいと思った時、ここしか帰る場所がなかった』。
ところどころでは、二人が、チェスをしたり、文学について語りあったり、仕事の上でのやりとりなど、対等さが描写される。
物語の最後では、夏美も、話しつくしたい、聞いてもらいたい、あなたのことを聞かせて欲しい、と望む。

時間と日々の関係性の上に築かれるもの。それをなんと呼ぶのか、私にはまだわからない。
しかし、一番の親友で、理解者で、協力者で、保護者でもあるような関係性、実の親や家族にも見せたことがなく自分でもそんな部分があったと知らなかった部分を互いに引き出しあうものが、夫婦にはあると思う。

この物語を、たんにダブル不倫の、それぞれの恋の話としてだけ読むのは、非常にもったいない。むしろ、今回、この夫婦のやりとりの部分だけを抜き出してもう一度読んでみたいと思った。
もっと時が経ってから、また読み直してみたい。