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おばあさまはどのようにしてウェアウルフになったのか|タニス・リー著『狼の森』

2016.7.24

 原題は、Wolfland。
 短編集『血のごとく赤く』 RED AS BLOOD Or Tales from the Sister Grimmer の一編。
 “グリマー姉妹”が表す通り、グリム童話を下敷きにしたタニス・リー流の物語集。

 16歳の少女リーゼルの目を通して見る、代替わりの物語。だけど、アンナの半生が物語られているから、アンナおばあさまが主人公だと捉えてもいいのかもしれない。あるいは、主人公が二人いると。

森の狼
Angell Williams

あらすじ

 リーゼルは自分が生まれるのと引き換えに母親を亡くし、父親の放任の元、好き放題に育った。16歳のある日、母方の一族の女家長で桁外れのお金持ちでもある祖母アンナから、贈り物とともに呼び出しの手紙が届く。都会で遊び暮らすのが好きなリーゼルは、50キロも離れた森の中の人気のないシャトーになど行きたくはない。しかし、アンナの機嫌を損ねることは相続するはずの遺産を手放すことになる。リーゼルは生まれたとき以来会ったことのない、変人と噂のアンナへの好奇心もあって、出かけて行く。
 森には狼の群れがいたが、シャトーの門が開け放してあることにもアンナは気にするでもない。夜には屋敷の中に入ってくる巨大な狼にも遭遇する。翌日、アンナから夫の暴力に耐えかねて狼の女神と契約を結んだはこびを聞く。その契約はリーゼルに受け継がせると。反抗したリーゼルだが、日が沈むとアンナの後から森へ入っていく。

物語の輪郭

主人公が○○する話』で言うなら?

  • 主人公が、おばあさまに会いに行く話。
  • 主人公が、相続する話。
  • 主人公が、人狼を知る話。
  • 主人公が、おばあさまの正体を知る話。
  • 主人公が、血に流れるものを受け入れる話。

上記に『いつ・どこで・誰と・何を・どのように』を補足してまとめると?

 19世紀のスカンジナビア、馬車の時代。都会で好き勝手に育ってきたリーゼルは、一度も会ったことのないおばあさまの要請で、田舎にあるシャトーへと向かう。そこで過ごす2日間の間に、おばあさまから受け継ぐのは莫大な財産だけではないことを、身をもって知る。

好きポイントは?

  • 我儘で傲慢、高飛車で計算高い主人公だけど、精いっぱいなところ。
  • 冬の、薄明るさの中で物語られる、仄暗い物語であるところ。
  • ひとりの女が、守りたいもののためにいかにして強さを身につけたかという点。
  • 自然がもつ、強大なパワーを感じるところ。
  • 虐げられた者が力を身につける物語だとういうところ。
  • 壮麗なシャトーの様子。
  • イメージさせる色合いの美しさ、対比。(雪の白、氷の輝き、金髪、血の赤のマント、森・シャトー・アンナのドレスの黒)

 物語の最後のあたり、以下の引用部がとても好き。あるべき場所にあるものの姿だと思う。

そのとき一頭の狼が森で歌いだした。(中略) 突然に寒気と走ることと黒い静寂の意味がわかった。また白金の月や赤く染まる宴や自然の中の聖歌も。
タニス・リー『狼の森』より

主人公の欲求・価値観・能力は?

欲求

 都会育ちの若い娘らしく、同じ年頃の人々から注目を浴びて遊び暮らすのが好き。贅沢な物(衣服、アクセサリー、食事など)も大好き。
 刺激を求める傾向にあり、会ったことのない“変人”おばあさまに好奇心を抱く。早い時間に追いやられた寝室では恐怖小説を見つけ、決闘・強姦・黒魔術・銃殺の部分にのめりこむ。

価値観

 自分が一番。自分の身を守るためには、使用人が狼に喰われても当然だと思ってる。
 自由さの価値も高そうだ。好きなことができること、という意味でも、権力を持つ・ふるうという意味でも。
 富にも価値を置いている。自分が相続するはずのものの財産価値を計り、うっとりと眺める。

能力

  • 不興を買わないようにと言動に注意するなど計算高い。
  • 旺盛な好奇心を満足させるために、悪知恵を働かせる。
  • 上記2点から、頭がいいとも言う。
  • よいものを見る目がある。
  • 自分が一番大事で好きなことをしているっていうのは、自分に正直・素直とも言える。
  • 自分の血に流れるものを受け入れてしまうあたりの順応力は高いのかもしれない。

読後に思ったこと

 主人公リーゼルは、現実に友達にしたいタイプではないけれど、なぜか嫌いじゃない。あるがままにある感じがする。暴力夫だった祖父の血と、我が身より子供を守るために冷酷さを身につけた祖母の血の両方を受け継いだら、傲慢ぐらい、かわいいものだろう。もっともっとサディスティックになっても、物語的にはおかしくないし、最後に小人の“綺麗”に対して行ったしぐさには、その片鱗がうかがえる。夜、狼に交じって月日を経た後に、どうなっているだろう?
 残忍さ。狼や自然の冷酷無情なありさまは、人間からみたときの評価であって、それらのものは あるままにあるだけだ。アンナの夫の暴力性は、物語に語られているだけで推測するなら、女や子供、使用人に対してふるわれる。つまり弱いものに。一方、人狼となったアンナや自然そのものの無慈悲さは、それこそ、あるがままの性。アンナは生を守るために、夫を殺した。それを残忍と言うのだろうか?
 夫の暴力で子供と生き別れになり、そのまま別の生を生きなくてはならなかったアンナを、ただの弱い女性にしないところがタニス・リーっぽい。
 それにしても、このお話はグリム童話のどのお話にあたるのだろう? 私、知らないな。