深く感じ考えさせられる…永遠のテーマをあつかった洋楽8選

2016.12.8

英語で歌われる曲は、何かが心にかかり、好きになるものが多い。気になって歌詞を調べてみると、想像とは全然違っていて驚くものもある。
今回は、これまでに私が出会った、社会的だったり人生の問題だったりを扱った曲を集めました。折に触れて思い出され、聴いては感じ入り、考え込むような曲たちです。
親子の不仲から始まり、貧困、虐待、人種差別、戦争を経由して包括した後、それでも信じることを忘れるな、というパワフルな曲で締めます。

Mike & The Mechanics – The living Years

『すべての世代が、前の世代に不満を持ち非難する』。親と子が、その典型だろう。父を亡くした息子によって作れらた歌。
私はこの曲を聴いて、母との関係を修復しようと心に決めた。相手が生きてるうちだから、努力することもできるんだと気づいて。
親も、一人の人間。間違いや欠点や弱さを抱えた、一人の人間なのだと認めることができた。

Fast Car by Tracy Chapman Studio Version

速い車でどこへ行きたいのか? ここではない所ならどこでもいい。主人公が願うのは、都会へ出ていくこと。だって、父親はアルコール浸りだし、母親は駆け落ちして出て行ってしまった。そんなに遠くでなくても、ここでない所でならましなはず。
どこかへ行ってしまいたい。ここでない場所でなら、もっと何もかも違うはず。電車の窓から、外を眺めていた日々を思い出す。
清算してからでないと、そのツケがついてくることがある。この曲の主人公は、別の街で、幸せとは言えない生活を送ることになる。まっとうに働いてるし、あたりまえのはずの小さな幸せを望んでいるだけなのに。速い車で連れ出してくれたその人は、働かず酒を飲むようになってしまった。
「このままでいたくない」の想いが心に染み入る。

Suzanne Vega – Luka

さりげないような曲。テーマは虐待。
同じ建物内に住む人に向かって、おそらくは幼いであろうルカが話していることが、淡々と続く。
「大きな物音がしても、何があったのって訊かないでね」
虐待を受けた子(子どもに限らない)は、自分のせいだと思い込むという。そうなっていくんだよね。あのとき自分がもうちょっと早く〜をしていれば… そこで自分が〜と言わずにいれば… そんな風に考えるようになっていく。
「物を壊されたり、投げつけたりされない所にいたいんだ」と吐露し、殴られ続けたら何かを言う気もなくなるでしょ?と、ルカは言う。
男の人に殴られると、その痛みよりあからさまな力の差という衝撃で、無力になる。体で覚えている痛みの恐怖に、逆らうことはおろか、身動きもとれなくなっていく。

Bruce Hornsby, The Range – The Way It Is

差別について歌われている。歌詞中に、1964年に法律が作られたとある。有色人種への差別是正のための「公民権法」のことらしい。この曲は、白人歌手によって作られているが、有色人種の立場から見た社会。
繰り返される that’s just the way it is は、あきらめを通り越したところにある受容「そんなもんさ」。
それでも『それを信じてしまうのかい?』。法律も、人の心までは変えられない。変わらないものもある。それでも、それを「そんなもんさ」と受け入れてしまったら、本当に何も変わらないんだよ?と、問いかけられているように感じる。

Cyndi Lauper – What’s Going On

繰り返される「どうしちゃったっていうんだ?」が印象的。「どうなってるんだ?」「一体どうしたっていうの?」
war is not the answer. 何がどうなってるのかわからないうちに巻き込まれていくようなかんじが、伝わってくる。もし戦争が始まったら、そんな風なんだろうと想像する。いつの間にか、それは起こる。
冷静になろう、話し合おう、わかりあえるはずだ…言ってみたところで、もう遅いのだろう。

Paula Cole-I Don’t Want to Wait

曲の出だしに私は、よく晴れた日に洗われ干された白いシーツが翻る光景をイメージする。そんな平和で爽やかな曲ではない。
1944年と、具体的な時が歌詞にある。第2次世界大戦の頃。6ヶ月と3歳の子どもがいる女性が主人公。各家庭では電話が鳴り響く。そのたびにどんな気持ちになったか。タイトルの I don’t want to wait は、その電話が、夫の生死を知らせるものだということを指している。「生きています」あるいは「残念ですが…」子どもたちから父親を奪われる不安もある。戦争から帰ってきた夫の心と体には傷が残り、孫を持つほどの年月が経っても癒えることがない。
それでも『朝に目覚めて、皆に(心にも)平和が訪れるよう祈りましょう』と歌われる。『私たちは今を生き続けている』のだから、と。

The Black Eyed Peas – #WHERESTHELOVE ft. The World

殺人に始まり、虐待、テロ、戦争、暴動、人種差別。ここで歌われている問題は重い。
ニュースで見聞きするようなそれらは、私には、自分の身に降りかかることとしては想像がしにくい。現実として存在しているということを“知っている”にすぎない。
『右の頬を打たれたら、左の頬を差し出せと説いてるだろ? やってるのかよ』と歌われている。
『愛は鍵、愛は答え、愛は解決法、愛はパワフル』

Journey- Don’t Stop Believing

ちっちゃな町の女の子は、このばあい田舎の子だろう。デトロイト、都市部の男の子との対比。どちらも夜中に、電車でどこかへ行こうとしている。
『誰かが勝ち、誰かは負ける、他の誰かはブルースを歌うために生まれてくる』
世の中は、決して公平ではない。みな、何かを求めてる。求めたものが手に入ると思ってるから。その気持ちを忘れないで。信じることを止めないで。可能性を閉ざされて開くことができず、希望を失い絶望してしまうと、何もできない何も変わらない。

音楽音楽,人生

Posted by 照山直子