よりよくあるために「ストローク」という考え方
抱きしめて を書いてみて、自分を振り返ると、いかにストローク飢餓だったか、よくわかります。
今回は、TA(交流分析)の考え方の中から『ストローク』について、少しお話ししてみます。
ストロークとは
交流分析またはTAと呼ばれる心理学の用語です。具体的には後述しますが、“刺激”を指し、6つに分類されます。
人が存在するために不可欠なものと云われ、創始者 エリック・バーンは「存在認知(recognition)の一単位」と定義しています。
例えば、ポイントの貯まるカードがありますね。「1ストローク=1ポイント」とイメージしてもらうと、わかりやすいかな。
ストロークの種類
まず、①「言語」と「非言語」、そして②「肯定的」と「否定的」、③「条件付き」と「無条件」の6つに分類します。
以下に少し詳しく説明します。
- 言語・・・文字として書かれたものと、口に出された言葉のこと。
- 非言語・・・顔の表情や声のトーン・大きさ、視線、姿勢、ジェスチャーなど。
- 肯定的・・・受け取る側が、心地いいと感じるもの。
- 否定的・・・受け取る側が、つらい・痛いなど不快と感じるもの。
- 条件付き・・・対象や範囲など、限定的なもの。
- 無条件・・・条件のないもの。
ストロークの具体例
6つに分類されるストロークですが、組み合わせで成り立っています。具体例をあげてみますね。
- 言語+肯定的+条件付き・・・「お前は女らしくていいよな」「テストで80点以上とったら、○○を買ってあげる」
- 言語+肯定的+無条件・・・「大好きよ」「あなたを信じます」
- 言語+否定的+条件付き・・・「あんたの頭の悪さには我慢できない」「言うことをきかないと知りませんからね」
- 言語+否定的+無条件・・・「だからお前はダメなんだ」「死ね」
- 非言語+肯定的+無条件・・・頭を撫でる、握手、笑顔を向ける。
- 非言語+否定的+無条件・・・無視や身体的な暴力。
「非言語+肯定的+条件付き」と「非言語+否定的+条件付き」は、例を見つけられませんでした。しいて言うなら、思い浮かんだのは、犬のしつけ。なにかできたら食べ物をあげるとか、撫でてあげるをします。これは「非言語+肯定的+条件付き」でしょう。
ストロークについての考え方
ストロークの価値は、受け取り手が決めます。よく聞くのが「ほめたのに相手が怒った」という出来事。言った方にとっては褒め言葉でも、相手(受け取り手)が不快に感じたら、それは否定的なストロークということになります。
冒頭でお話ししたように、ストロークは人が存在するのに不可欠(根拠とする研究・実験はありますが、ここでは省きます)。肯定的なストロークを与えられ、受け取り続けることができれば、人は安定し、楽しさや幸せを感じ、やる気が出るとも云われています。
ストロークは、他者からだけでなく、自分自身に与えることもできます。胸の内で言う「いやー、頑張ったなー」や「よくやった!」とか、セルフ・マッサージなどもいいですね。過去の良い出来事を思い出すことでも、自分が快を感じられる状態なら、肯定的なストロークを受け取れています。
ストロークをやりとりするために
ストロークは貯めておくこともできるものですが、不足すると否定的なストロークでも受け取ろうとするようになります。これ、悲しいよね。なので、ストロークをスムーズにやりとりするために、以下のような法則を頭の片隅に置いてください。
- 与えるストロークを持っているなら、いつでもそのストロークを与えよう。
- ストロークが必要なときには、求めていい。
- 欲しいストロークがきたら、受け取ろう。
- 欲しくないストロークがきたら、拒否していい。
- 自分自身にストロークを与えることを楽しもう。
家族や親しい間柄なら、スキンシップを推奨します。存在の無条件な肯定ストロークになるのでね。
自分自身を褒めてあげることも、勧めます。自画自賛?それでいいじゃないですか。他者に「褒めて!」と求めてもいいんだって、覚えておいてくださいね。それから、受け取りを拒否したっていいってことも。これ、大事です。
さいごに
「ストロークされた行動は強化される」という法則があります。例えば、相手がしてくれて嬉しかったことは大喜びしましょう。肯定的なストロークをもらったのだし、相手が「そんなに喜んでくれるなら、またしよう」と思ってくれる行為ですから。
逆にして欲しくないことをされたとき「どうしていつもあんたはそうなの!」を繰り返すのは、否定的なストロークを与えます。それも行動を強化することになるので、気をつけてください。
与えるストロークがない…と思ってしまった人はいますか? もしそうだとしたら、自分のストローク不足を想ってみてもいいかもしれません。そのばあい、無理しないで! まずは補給することを考えてください。他者に求めるか、自分で自分に与えるか、両方でも、自由に選んで補給してください。
肯定的なストロークの不足は、人間関係をギクシャクとした冷たいものにします。自分にも相手にも、肯定的なストロークを与えることを心がけてみると、毎日が変わっていくかもしれませんね。