私たちが生きているもうひとつの現実|イメージ世界への誘い
私たちは、ふたつの世界を生きている。人によっては、そんな表現をします。ひとつは、“現実”の世界。もうひとつは、“イメージ”の世界。
今回は、ふたつ目の“イメージ”の世界をご案内します。迷子になりやすいから、気をつけて。
イメージと言葉
イメージとは何かを語るとき、比較に出されるのは“言葉”です。
言葉は、論理的・分析的・現実的な思考をしたり、他者とのコニュニケーションを円滑にするために使われます。
イメージは、直感的・全体論的・象徴的なものを表現したり、自分とのコミュニケーションを効果的にするために使う。
言葉はある一定の理解、たいていの人が「ああ、こういうことね」とわかる共通の意味を持っている。
イメージは人によってさまざまであり、他者には(時には自分自身にとってさえ)何のことなのか理解できない内容を表す。
難しい・めんどくさい話は、特にいいですよね? “言葉”と“イメージ”は、違うんだってことだけ知っていただければいいと思います。
捕まえ方や表現方法は人それぞれ
“イメージ”には、視覚的な要素がふんだんに盛り込まれているように思います。例えば、「太陽」と聞いたとき、意識しなくとも思い浮かぶ形。でも、それだけが“イメージ”ではありません。
「イメージが浮かばない」と言う人は、見ようとしてるばあいがある。
例えば「海」。どんなふうに想像しますか? ある人は、まず波の音を想像する。また別の人は、潮の匂いを嗅ぐかもしれない。肌に風を感じる人もいるでしょう。
“イメージ”とは、視覚的なものだけではありません。聞いたり・嗅いだり・体で感じたりもできる。
また、イメージを表現するのに「ええと…海は青くてキラキラしてて、波しぶきが白くて…」言葉を使おうとすることが多いけど、「こんなふうに波がうねる」と腕を動かす動作で表現することもできます。あるいは「ザザザー…」文章ではなく、擬音で表現した方がぴったりと感じることもあります。
“イメージ”の捕まえ方も、表し方も、人それぞれなんだってことを覚えておいてください。
ばっくりと、イメージについての説明はこれで終わりです。
今日の目的は、イメージの世界を冒険してもらうことだから。
イメージ世界の冒険のしかた
想像してみて? ここではグレーがかった白い霧が深く、物の色や形が漠として定まさらない。
見下ろした自分の足さえもが、ぼんやりとしている。
いっそ目を閉じててもいいかもね。
ここを歩いていきましょう。
だいじょうぶ! 肉体的に傷つけられるようなものは、何もないから。夢の中にいるように…
この世界で迷子にならないために必要なのは、地図でもコンパスでもなく、自分の“大人”の部分。そして、冒険を進めていくために必要なのは“子供”の部分。
さぁ、二人で手をつないで歩いていきましょう。
大人と子供が手をとりあっていく意味
冒険には、自由奔放さが必要です。純粋な好奇心や、素直でオープンな態度。善悪ではなく、直感的に体験し、見聞きしたものをそのままに受け入れていくこと。これをここでは、“子供”の部分と呼びます。
一方で、安全に旅するために“大人”の部分も不可欠です。どの道を通って行くか判断ししたり、体験の意味を考え、理解し、意味づけしていく役割を負った部分になります。
準備はいい? さぁ、冒険に出かけよう!
冒険の手順
広大な世界を前に、さぁどうぞ行ってきていいよと言われても、困りますよね?
イメージをより効果的に味わうために用意されたチェックポイントがあります。まったくの初心者はもちろん、経験を積んだ旅人にも最適なので記しておきます。
- リラックスして、時間と空間を開ける。
- イメージを招く。
- 調べて探る。
- 質問・提案する。
- イメージになってみる。
- 味わいつつ進める。
- 最初に戻り、変化を感じる。
- 感謝して、イメージの世界を後にする。
手順の解説
ひとつずつ、もう少し具体的にお話しします。
- イメージの世界を冒険するのに、リキミは禁物です。「さぁ来い!」じゃなくて、ゆったりとした気持ち・姿勢で、気がかりになりそうなものを全部脇に置いてから「さぁて、今日はどんなかんじかな?」ぐらいでぶらぶらと行きましょう。
- 「おいでーおいでー」とイメージを招きましょう。特定の事柄についてのイメージを招きたいときは、○○についてのイメージをとお願いします。そして静かに座ったまま、イメージが揺らめき立ち現れるのを待ちます。
- イメージが現れたら、前後左右、上から下から斜めから、観察しましょう。ついでにイメージの周囲がどうなっているのかを探るのもいいです。
- なるべく簡単な、文字にするなら『ひらがな』のような言葉で、質問や提案をします。「いつからそこにいるの?」「前はどうだったの?」「どんなふうに感じてる?」「どんなことが気になる?」「どんなふうだったらいいかんじ?」ズバリ「あなたは何?」もありです。
- 『なる』というのがどういうことか、わかりづらい人も多い。夜に眠って見る夢の中で、別人になってたこと、ありませんか? そんなかんじです。自分の魂だけがそれの中に入るかんじ。イメージに『なって』みれたら、そのかんじを感じます。
- 周囲を見回したり、好きなこと・思いつくことをしてみます。イメージの中でね。時間を進めて未来に行ってみるのもいいです。
- 最初、イメージが浮かんできたときまで時間を戻ります。一気にね。そして、何か違って見えるものはあるか、感じることがあるかを調べます。
- イメージと、体験したことに感謝して、現実に帰りましょう。クラクラするかもしれない。ゆっくりね。
以上が、心理カウンセリングで使う技法の一つ、イメージワークの概略です。おもしろそう?
私の旅『イメージワーク』の実例
一口にイメージワークと言っても、入り口さまざまだし、進め方も体験もさまざまです。
そんな中で、上記の手順で行ったワークの例をふたつご紹介します。
ひとつ目は、私が一人で行ったもの。
ふたつ目は、私がクライアントとして、カウンセラーの元で行ったものです。
一人でもできる簡単イメージワーク
「今の私の状態は?」自分自身に、折に触れてする質問です。
家に一人でいるとき、道を歩きながら、電車に乗りながらでも。イメージが浮かんでくるような状況でならいつでもできる。
そのとき手順の通りに進めないで、後ですることもあるし、浮かんだイメージをあえて探ろうとしないこともあります。自由なんです、イメージワークって。
「今の私の状態は?」訊いた応えとしてのイメージ
まず、色が見えてきた。赤や黄色、緑。なんだろう?思って見ていると、形になり始めます。
四角形の、積み木。積み木?なぜ?と思いながら、さらに見ていく。いくつかは、積み上がって、家の形を作っている。
崩れて足に当たったら痛そうだなと思うと、積み木がとても軽いのがわかる。角も尖ってはいない。 周りには、まだ使っていないのがバラバラに転がっている。組み直すのね、と納得する。
一個いっこの積み木は、私の持っているなにがしかの要素。それらはいとも簡単にバラバラにすることができて、また組み直すことができる。積み上げた形によって、できあがる物が変わる。私は自分が、またバラして組み直したいと感じていることを知る。まだ使えてない要素もあるしね。何度でもやり直していいんだということも知る。
「どうなったら、もっといいだろう?」訊いてみると、他の誰かの気配がした。一緒に遊びたい! 誰かと一緒に楽しく遊びたいと思っていることを知る。そこにある要素は私のものなのだけど、形を作っていくのに誰かの助けを借りたいと感じていることがわかる。一緒に、楽しみたいと。
カウンセリングでのイメージワーク
ある問題を解決するために、イメージワークを行いました。テーマがあるばあいのやり方ですね。ただし、記憶を元に記すもので、会話の形式のやり取りは言葉を忠実に再現するものではありません。
イメージになってみたワークの事例
問題について一通りの話をした後、「そのイメージがこの部屋にいるとしたら、どこにいる?」カウンセラーの質問に、私は「そこ」と指を指す。
そのときのイメージは、幼い女の子の姿をしていた。床の上に、丸まって、横倒しになっている。カウンセラーの誘導で、私はその子と呼吸を合わせ、完全に一致したと感じたところで同じ、まったく姿勢で横たわる。
目を閉じていると、そばに座ったカウンセラーの声が聞こえてくる。いくつかの質問
「そこはどこ?」「暗くて、湿ってるような所」
「あなた、いくつ?「本が読めるくらいの歳」
「いつからそこにいるの?」「ずっと前から。誰かに抱えられてここに来て、投げ出された」
「その前はどうしてたの?」「わからない。思い出そうとすると…怖い…」「いいよ。思い出さなくていいよ」
夢の中で夢を見るように、渋谷のスクランブル交差点が見えた。横たわる私には、行き交う人々の足首から下しか見えない。
「どうだったら、もっといいかんじになれる?」「目が覚めれば…」
「目が覚めれば、いいかんじ?」「わからない。ずっと眠ってたの。目が覚めたことがないの」
「じゃあ、目を覚ましてみる?」
カウンセラーの提案で、私は目を開けるのだけど、その直前に、幼い女の子のイメージが「世界が美しいといいな…」とつぶやいたのを聞いた。消えていくように。
目を開けた私が最初に見たものは、緑の生垣に積もった真っ白な雪と咲いている真っ赤な花だった。ワーク直後の、ぼんやりとした意識で、彼女(イメージ)が望んだように世界は美しいのだと感動して涙が流れた。
イメージに『なって』みると、時間の感覚や気持ち・口から出る声の質や話し方など、さまざまなものが激変することがあります。まるっきり視点が変わる。
私は上記ワークで、私の一部分が、本が読めるぐらいの歳のままで時を止めていたことがわかりました。詳しくは話せないけれど、その後2年ぐらい経ってから、あのことか!と急に理解できたこともあります。
イメージワークのおもしろさは、一瞬にしてはっきりと理解できることもあれば、長く時間が経ってからハッと驚かされることもあるという点。いずれも、自分が意識的には気づかなかった・理解しいていなかったことである点。
不思議な国イメージの国へ旅立ってみませんか?
私はクライアントとして、またカウンセラーとしてさまざまなイメージワークを体験し、学びました。これらは特別に行うものではなく、日常の中のちょっとしたとき・ことに対して行えるものです。実例のひとつ目なんかみたいにね。最初はエテフエテのあるものかもしれない。だけど、誰でも練習すればできるようになれるものです。イメージは見るだけでなく、音や動き、匂いやリズムでもあるということを覚えておくと、やりやすい。
イメージが好きすぎて、イメージだけを集めた別サイトを立ち上げ中です。いつできるのか、わからないけどね。
深くワークするには、最初はカウンセラーのガイドの元で行った方がいいし慣れてコツをつかむ必要もあるけど、手軽なワークならいつでもどこでもどんなでもOK。
冒険の旅に出てみませんか?
[baloon-line-left img="https://nyanchest.com/wp-content/uploads/2016/12/nao.jpg"]とても興味深い体験と、なるかもしれません。[/baloon-line-left]
一番わかりやすく、体系だったワークとして優れている本を紹介しておきます。手順で紹介したのは、ほぼこの本のままです。