普段着の白ワイン
オープンテラスが、まだ珍しかったころ。流行り始めたころだったかもしれない。そこはレストランではなく、カフェでもなく、輸入食料品屋さん。店先に、お店で買ったものを飲食できるスペースがあった。
オープンテラスと言って想起するほどのオシャレではなかったけれど、ともかくも丸テーブルと椅子が置かれちょっと囲われたスペースがあった。季節はいつだったのか、ストーブもあったっけ。
日曜の午前中。30前後か、女性がふたり、向かい合って座っていた。
着崩れた、いかにもな普段着はそれでもどこかオシャレに見えた。おそらくはすっぴん隠しなんだろう、どちらも大きなサングラスをかけていた。声は聞こえてこなかったけれど、楽しそうにおしゃべりしていた。
彼女たちのテーブルには白ワインのボトル。
数秒間、立ち止まって見入ってしまった。
自立した大人の女性の、軽やかな自由さ。私のあこがれが、体現されていた。
あのときの女性たちの年齢をとっくに追い越してなお、あこがれの風景として覚えている。