誰が悪いでもない|私は独りではないと教えてください

2025.2.17

望んだ通りじゃないか。
そう思い当たって、あきれた。そうか、私が望んだものを得ようとしてるのか。
認知症の父の介護を、母と一緒にできたらと望んでいた。

目が開いたのは、午前1時過ぎだったろうか。
ここ何年かは、よくあること。「中途覚醒」と云うらしい。
しばらくすれば眠れるから、てんてんしていた。
眠るのをあきらめたのは、2時ごろ。目が開いたときに頭に浮かんだ考えのせいで、頭の中がいっぱいだったから。

数日前、母から電話がかかってきた。家を売って引越して「(私に)手伝ってもらえ」と弟に言われたのだと言う。
聞いた瞬間に私は腹を立て「なに言ってんの、私が通えると思ってんの?!」と言ったのは、弟の言葉に対してだ。次の瞬間考え直して「そばに来てくれるなら。本当に近くに来てくれるならシヴァ(愛犬)を連れて行けるなら、毎日行く。」と言葉を継いだ。
動物病院の会計待ち中にだったため、じゅうぶんに話すことができなかった。

以来、激しく心乱れている。

団地の1室である実家。維持していけないと母は言っていた。もちろんローンは終わっているが、毎月の管理費がかかるから。
それを思い出して、引っ越してからどうやって家賃を払っていくつもりか?との疑問が思い浮かんだ。いや、正確に言えば疑問ではなく不安だ。

私が最も恐れているのは、私に火の粉がかかることだ。———こう言語化できるまでに、そこそこの時間がかかった。
こうして書いてしまえば、とてもかんたんなことに思える。だけど人の心というのは、心と頭の結びつきいかんなのだろうけれど、言葉にするのはけっこう困難なものなのだ。

母だけに、認知症の父の世話をさせてきてしまった。母は父を憎んでいるのに。
賄っていくんだと、内情も知らず丸投げしてきた。年金がいくらかも、何にいくらかかるのかも知らないのに。
そう考えて、罪悪感に襲われた。

罪悪感と次々とわくいろんな不安に襲われて、ついにこの深夜に眠れなくなったわけだ。
向きあわなくてはならない。

こういうときは、書き出すのが一番効果的だし学びも多い。そう知っていて、やらなかった。
こうなってなお、目を背けたいからだ。
頭の中だけなのなら、ある意味で私はそれを「考えてる」とは呼ばない。なぜなら、言葉だけでなくイメージなどが浮かんでは消えていくにまかせている状態だと思っているから。そう、まさに「想ってる」とでも表したいような。
向きあった現実は、とても厳しく傷つくことがある、一方でハッキリさせてしまえば「なんだそんなことか」と楽になれることもある。どっちもあるのに傷つく方がこわくて、目を背ける。

もんもんとしてしばし。
その瞬間、正確にあるいは具体的に何を考えたのかは捕らえられなかった。だけど、少し気持ちが軽くなったのはわかった。

これは“私”が考えなくてはならないことだろうか?
“私”が不安にならなくてはならないことだろうか?
———親が困っているのだから、子どもの私が考えなくてはならないことだし不安を感じても当然のこと、と想っていた。もちろん、それはそうかもしれない。
けれど
こういう言い方をすると、自分自身でさえ「なんて親不孝な/無情な/ひどい」と思うのだけど……
親と私は別の人間なんだ。どんなに親を思っても、親の“代わり”に不安になることはできないし、もしできたとしても私にこの問題を解決する力もない。
こう言ってしまうと自分自身に対してひどいような気もするけれど「私が不安になっても何にもならない」。これが現実だと思う。

たぶんそういうことが思い浮かんだんだと思う。
事実というのは厳しくもあり傷つくこともあるのだけど、はっきりさせてみれば「なんだそんなことか」と楽になれることもある。そのとおりだね。
私が最も恐れているのはたぶん、私が解決できない物事に直面することだ。
どうしていいかわからなくて不安になり、できないのを認めたくなくて怒りで攻撃したりする。
それもこれも、私が「独りで何とかしなくてはならない」と考えてるからだよ。こんなふうに考えていたら、そりゃ生きるのが過酷だ。

おそらくは、第一子だから。
父ははっきりと「おまえには期待した(のに違った)」と、母からはよく「お姉ちゃんでしょ(なのに何でそんなことをするの/できないの)」と言われていた。それらを私は、成さなくてはならないこととして心の奥深くに取り込んでしまった。
これらはよくあることで、誰が悪いでもない。悪いことがあるとすれば、私たちの組みあわせが悪い。だって、私がしたように受け取らない子どももいるのだから。

だから、どうか私を責めないで。———私は自分にそう言うべきかもしれない。

これを書いてる途中で、母から電話がきた。
なんてタイミングだろう。弟に、都合のいい日時を聞いてくれるよう頼んだ。
私たちは助けあわなくてはならない。

どうか私に、私は独りではないと教えてください。
おそらくは母から受け継いだであろう試練を、皆で乗り越えていけるのだと教えてください。
どうぞ弱さをさらけ出す強さをもてますように。

つれづれ

Posted by nao