物語の登場人物と対話できるってわかった
ひょんなきっかけで、PCのフォルダを見てた。とりあえず保存して、すっかり忘れてるのを。
物語のかけらをメモしたのがあった。
たぶん、中学生だったころ、お話を書こうとしてた。最初の1行を書こうとして、言葉が出てこなくては、やめた。そんなレベルだった。
見つけたメモは、もっと最近のもの。それでも、もう何年も前のもの。
ふと浮かぶシーン。
登場人物がいて、風景がある。切々とだったり、淡々とだったりな、彼あるいは彼女の胸の想いを聞き感じる。
ときには複数人で会話してたりする。ポンポンとなされる会話。ふざけあい、笑いあい…
見聞きしたものの断片がメモされてた。
思ってみれば、いつでも人がいた。人がいて、物語を抱えていた。
ひとつのお話としてまとまるほどには、彼らは見聞きさせてくれない。
姿を顔を見せてくれる。背景が見え、音が声が聞こえる。
彼らは生活し、考え、望み、生きている。
もっと彼らにフォーカスすることができたら、彼らの物語を文字にすることができるんだろうか?
彼らを、もっともっと理解できたら?
彼らは、私の内にある。
すくいとったかけらのメモを読んで、気がついた。私は、人間とは?を書こうとしていたんだなと。
人間とは? 漠然とした、大きなテーマ。そんなものを、中学生ていどの人生経験で書けるわけもない。言葉が出ない、どう言い表したらいいのかわからない、だから書けないと思っていたのだけど。もちろんそれもあったけど。
できないことにも、複数の要因があるものだ。
今はプロットが作れないと思ってる。
私が持っているのは、登場人物たちが見せて聞かせてくれる、いくつかのシーン。どうしてそんなことを言ってるのかわからないし、その前後がどうなってるのかもわからない。まさに、かけら。
ああ、そうか。私は彼らに訊くことをしなかった。
あなたの着ている、それは何? 訊いてみたら、教えてくれた。
『プロテクト・スキン。こんな(つまみ上げて見せてくれる)…ほら穴があって、足から身につける。形状記憶がなされていて、僕の体温に反応して、身体にぴったりと張りつくんだ。素材は訊かれても答えられない。』
そうだったの。
対話すればよかったのか。思いつかなかったよ。
片方の眉をはねあげたのが見えたんだけど『僕は(片眉をあげること)はしない。キースだろ?』いさめられ、ついで『どの時点の僕かによる』と言われた。なんでも訊けばいいのかと考えたから、釘を刺されたのだ。
どうやら彼とは脳内対話が可能らしい。
彼だけではないようだ。他の人物も、訊けば応えてくれる感触がある。何人かの顔が浮かんだ。
おもしろい。そうか、あなたたちは実存的な存在なのか。
映画のメイキングとかで、キャストへのインタビューがある。あんなかんじだなってわかった。