夢叶う引越し。
「北はやめてよ!あんた、仕事もしないで家にいて、鬱になる!」と、母は言った。
口調の強さに驚いた。
実家を出てから、まるでジンクス。3年ごとに引越ししてる。主人と一緒に住み始めてからも、次が3ヶ所目になる。
まだ先、少なくとも1年以上、と思っていたのに、思いがけずも降ってわいたチャンス。しかも━━主人の都合があって詳しくは言えないんだけど━━、ものすごく好条件での。
初めてそこへ行ったときのことを書いた、「もし…だったらどうしよう」不安を味方につけて夢を叶えよう で、お話ししたように、主人の通勤を楽にするために引越しをする。
選んだのは、今住んでいる所からだと、東京の反対側。東京から出た所。
そこは、開発途上にある街で、駅前に大型ショッピングモールがあり、高層マンションがいくつか建っているだけ。5分も歩けば更地が目立ち、━━不動産屋さんによれば━━道路も変更されることがあるのだ。
わくわくする。これから出来上がっていく、その過程を、生活しながら観察できるのかもしれない。
最初、駅だけを決めて、見に行った。
ネットで空き部屋状況を調べてあった。うちは愛犬Sivaがいるので、第一条件は『ペット可』であること。3件しかなかった。
3件の中で、主人が第一希望にと強く望んだマンションは、南東の角部屋が空いていた。続きのバルコニーは私の憧れでもある。しかし、そこはすでにオテツキだった。
その後同マンションで空いたのが、北側の部屋だった。
北側って、良いイメージがない。
ネットで調べてみると、これは日本人だけが言っていることだと意見する人もいた。高い階(周りのくっつき度もあるけれど)なら、暗くはないとの意見も読んだ。
実際に見せてもらった部屋は、目の前に高い建物が立ちそうにもない13階。更地が見渡せて、暗くはなかった。他の物件も2件見たけれど、やはり主人はそこが気に入ったし、私も構わないと思った。ただ、ふたりとも━━2LDKなのだけど━━ちょっと手狭とは感じていた。
そして帰ってきたら、仲介さんから、南の10階、3LDKが空くとの連絡をもらったのだ。
母に連絡をして、マンションを見てきたよと話したら、冒頭の「やめてよ!」を言われたのだった。話の途中で。
もう南の部屋を仮押さえしてあったし、母の娘を案ずる思いとして受け取ることにした。
しかし、もし、北の部屋に決めたよと話したら、いったいどうなっていたんだろうと、今も考える。
今日やっと、3LDKの部屋を見せてもらって来た。
退去直後で、クリーニングもまだだったから、さすがにキッチンには少し汚れがあった。
白い部屋。ヘンな間取りで、図面を見てどうなんだろう?と思っていたけれど、それほどの違和感はなかったし、おもしろく使えそう。
今使っている家具のほとんどは、主人ともういいねと相談してあって持っていかない。どこに何が必要か、どう置こうかを想像しながら部屋を回った。
ヘンな間取りゆえに、広くは感じない。北の、見せてもらった部屋よりは使い勝手が悪くなさそう。
「居心地良くしてくれるんでしょう?」と、目に不安を浮かべている主人。私の腕の見せ所だね。
帰り道、カーテンを物色してきたけれど、気に入る物はなかった。
今回はね、外から見える部屋ではないし、気にいる物に出会えるまで探そうかと思う。
ゆっくりと、少しずつ部屋作りをしてみたい。
夢は叶う。
次のマンションには、建物内に大浴場とジムがある。両方、居住者は無料で使うことができる。
主人の夢、外が見える大きなお風呂が叶う。
私の夢、ルームランナーが叶う。
今回の引越しでは、コマゴマとサマザマな、私たちの夢が叶う。