なくしもの

2016.11.15

一緒に暮らし始めてから、初めて主人がいない。会社員だから平日の昼間はいないけど、夜いないのは初めて。
愛犬はいてくれるものの、家がガランとして感じられる。たりないかんじ。まるで、何かなくしものでもしてしまったかのようなかんじ。
主人なしに寝るんだなと思うだけで寒い。

一緒

「ご主人が死んじゃったらどうしますか?」と訊かれたことがあった。「どうしたらいいかわからない」と応えたら、彼女は「主人が死んだら、私も死んじゃいます」と言っていた。
そうだろうか?
私はきっと、後を追うように死ぬことはないと思う。生きてると思う。ただ、ほんとうに、どうしたらいいのかわからないで。ただただぼうぜんと、途方に暮れるんだろう。

白鳥や狼や、パートナーを定めたら一生を連れ添う、ツガイたち。
これも、依存なのだろうか?

もし明日、世界が終わるとしたら、どうする?と主人に訊いたことがある。
「家にいるね」と言っていた。特別なことをしたいでもなく、普通に家にいたいと。
満たされている気がする。もちろん、ほんとのところは、実際なってみないとわからないのだろう。だけど、二人でいることに満たされていると感じた。

以前勤めていた会社で、植物状態になってしまった人がいた。横になったきり。
お見舞いに行って、顔をあわせた奥さんは「意識がなくてもいてくれるだけでいい」と言っていた。その人は、結果として一年後に亡くなった。奥さんは、お葬式のときには、1年あってよかったと言っていた。気持ちの整理をする時間がもてたようだ。

もし、今日この人を失うとしたら? そう思って目を向けてみる。言わずにいて、後悔しそうなことはないだろうか? 言葉だけじゃない。伝えずにいることはないだろうか?
見送りの玄関で思う。姿が見えなくなるまで。

もう一度、ぎゅーしておけばよかった。